2012年12月01日

北九州がれき記事「一方的な押し付けは横暴」『ジャーナリスト』2012年11月25日

北九州市のジャーナリストによる、がれきに関する記事をご紹介致します。

<筆者 林田氏のメッセージ>
日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙『ジャーナリスト』11月号(通巻656号)に、がれきの記事を書きました。北橋市長をただ攻撃するだけでは何も進展しないので穏当な表現になっていますが、国、環境省、北九州市の言うことを、ただ信じるだけの市民に反対派の言う論理も考えてほしい思いでいっぱいです。スペースの関係でカリウム40に対する考え方の相違など割愛された部分もあります。【林田英明】


《『ジャーナリスト』2012年11月25日・第656号(日本ジャーナリスト会議)》

がれき焼却に北九州市の民意分かれる

「一方的な押し付けは横暴」

 宮城県石巻市の震災がれきの本焼却が、北九州市で始まっている。2014年3月まで、計6万トン余りが処理される見込みだ。だが、放射能への不安は市民に根強く残る。北橋健治市長の慎重な手順を理解しつつも、不安解消の方向性になお修正の余地があるように私は思う。

 確かに市長は、放射性セシウムの管理目標を1キロ当たり100ベクレル以下と厳しくし、5月の試験焼却の結果を「人体や農産物に影響はない」と胸を張った。有識者検討会(21人)も受け入れを後押ししている。
 市長の信念と、被災地を訪れての熱情はよく伝わる。市民にも「復興に向けて何かをしたい」と“絆”の感情がほとばしり、共鳴が広がっている。

しかし、受け入れの進め方に違和感を消せない市民も少なくない。それが端的に表れたのが、千人が参加した6月のタウンミーティングだった。

 市側と市民の対話がかみ合わない。レントゲン検査などを挙げて市長が「日常から放射線と向き合って生きている」と発言したのに対し、ある男性は「それはリスクを背負ってやむなく受ける外部被ばく。がれき受け入れは、全く意図していない人に同じように被ばくを強制する」と声を上げた。すかさず有識者検討会のメンバーである岡崎龍史・産業医科大講師(放射線衛生学)が「チェルノブイリ事故で健康被害は出ていない。放射能はどこにでもある。(受け入れる)がれきは一般のごみと変わらない」と断言した。すると別の男性が、核施設や原発稼働地から160キロ以内に住む人の乳がんが増加している米統計学者の解析を基に低線量被ばくを侮ってはいけないとする意見を出し、1時間余りの質疑応答は平行線のまま時間切れで打ち切られた。

 バグフィルターについても見解に開きがある。市がセシウムの除去率を99.9%だとするのは環境省によっている。国立環境研究所資源循環・廃棄物センター長の大迫政浩さんも「排ガスからの被ばくは無視できるほど低い。ダイオキシン対策が施された施設では、バグによる低減効果は十分機能している」と話す。これに対して環境ジャーナリストの青木泰さんは、バグの捕捉率は85%程度ではないかと見ており、「燃やすと放射性物質が大気に拡散し、回り回って生物の体内に濃縮される」と恐れ、環境省の姿勢を「焼却ありき」だと批判。アスベスト、ヒ素、六価クロムなどの化学物質の飛散も心配する。

 もちろん、がれきは早く処理されるほうが望ましい。しかし、現地からの輸送費が1トン当たり5万円余計にかかってでも汚染度の低い九州に持ち込むべきものなのか。反対派の疑問はそこにある。北橋市長が意に沿わない考えを「風評被害をあおる」と否定するばかりでは距離が縮まるはずもない。放射能の影響を受けやすいとされる子どもを持つ女性らの危惧を、すべてエゴや取り越し苦労だと決めつけてしまう「権威」こそ問い直してみるのが福島原発事故の教訓ではないか。知見は将来変わりうる。

 北九州市環境局のある職員は「市長は小心者。(15年の)3選出馬を考えれば、3月の議会での全会一致を無視できなかった」と、受け入れ背景の一端を私に語った。小心ではなく細心と、そこは読み変えたい。だからこそ、市民が賛否を判断するために、反対派の論理も併記した情報こそ広く提供してほしい。それが行政の長としての、未来への責任だと思う。

 タウンミーティングで終盤に出された意見が印象に残る。情報源の違いが賛否の立場を決めていると前置きして「真実は誰にも分からない。ただ、一方的に押しつけるのは横暴。冷静に考えることが必要だ」。後悔のない建設的な議論を深めるため、市長に「大人」の歩み寄りを期待したい。【林田英明=北九州支部】


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posted by ハイキブツバスターズ北九州 at 22:53| がれき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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